産学官連携

今後の産学官連携についての基本的考え方

出典:「イノベーションの創出に向けた産学官連携の戦略的な展開に向けて」
平成19年8月31日
科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会

厳しい国際競争の中、独創的な研究成果からイノベーションを創出していくことを求められている我が国にとって、産学官連携は、その実現のための重要な手段である。

大学等は、民間では生まれにくい基盤技術や新たな知見を創出する「知」の拠点であり、そこからは長期的に価値を生じる革新的な研究成果が生み出される。イノベーションの創出のためには、大学等における教育・研究と、これらから生まれる新たな社会的価値の創造の三要素を一体化する視点に立ち、知の創造と社会価値創造活動の双方向の結合力強化に向けた更なる改革とこれを支える人材育成策の強化が必要である。

一方、「社会総がかりで教育再生を・第2次報告」(平成19年6月1日教育再生会議)が指摘するように、現在、各大学は競争的な環境の中で切磋琢磨し、自らの選択に基づき、世界的な教育研究、幅広い職業人養成、総合的、国際的な教養教育、地域密着型、さらには地域の生涯学習など、機能別に分化し、それぞれが特色を出していくことが求められている。

各大学等においては、産学官連携活動についても、教育・研究と新たな社会価値の創造の三要素についてバランスの取れた一体化を図る視点に立ち、それぞれが定める使命に即して、主体的かつ多様な取組を、戦略的に展開することが望ましい。

このような観点から、今後の産学官連携は、各大学等がそれぞれ全体の経営を考える中で、主体的に産学官連携についての中長期的な戦略を立てて展開していくことが肝要であり、国は、その戦略的な取組を必要に応じて支援することにより、国全体の産学官連携の質の向上を図ることを基本とすべきである。

各大学等の具体の産学官連携活動の展開に当たっては、研究者の自由な発想のもとで独創的、先進的な研究成果を生み出し、そこから見出された優れた知的財産を、大学等内で、あるいは他の大学等との連携により発展させるとともに、最終的には、企業との連携等により実用化し、活用していくことが不可欠である。その際、産学官がお互いを理解・尊重した上で、目標を共有し、適切な役割分担を行うことが求められる。

これまでの取組を俯瞰すると、各大学等においては、知的財産の創出・管理に比べ、イノベーションにつなげるための知的財産の活用に関する取組はまだまだ弱いのが現状である。平成18年12月の「教育基本法」や本年6月の「学校教育法」の改正により、社会貢献が新たに大学等の基本的役割として明確に位置付けられたことも踏まえて、各大学等においては、「研究成果の社会還元」を「第三の使命」ととらえて、これらの活動に取り組む教職員を積極的に評価するとともに、その大学等の知的財産の活用や、将来的に各大学等が自立的・効率的に知的財産活動に取り組んでいくという視点から見た場合の諸課題について、検討を進める必要がある。

特に、イノベーションの創出に持続的・発展的に貢献できる産学官連携体制を構築する観点から、大学等においては、研究の進展と一体的な知的財産戦略を進めることで、件数のみならず質の重視を念頭に、国際的な基本特許を生みだし、国際競争力につながる効率的な知的財産の活用を図る点を重視することが重要であり、知財関係者のみならず、研究者全体への知的財産戦略の浸透をさらに進めるべきである。

一方、目を世界に転じれば、2001年以降数々のPCTリフォームが行われ、また、日米欧の特許庁において出願様式の統一について検討が開始されるなど、国際的な特許に係る制度の調和や手続きの簡素化に向けた取組が進みつつある状況や、グローバルなイノベーション戦略の進展、アジアの科学技術の躍進などを背景に、国際的な知的財産戦略は大きく変化しつつあり、その影響は大学等にも及んでいる。このため、産学官連携活動の戦略もグローバルな環境変化に常に対応することが求められる。大学等の産学官連携活動もこのような変化に対応するべく戦略的展開を進める必要がある。

さらに、企業からは技術分野や産業分野に合致した産学官連携戦略が求められている。また同時に、地域振興の観点から、地域におけるイノベーション創出に関しても大学等との連携に対する期待は高く、単なるシーズ提供にとどまらず、シーズの評価や知財人材の育成など多様な連携が求められている。

このような状況の中で、平成15年度から5ヶ年計画で実施されている文部科学省の「大学知的財産本部整備事業」により、対象となった大学等をはじめとして、知的財産の機関一元管理の体制や知的財産ルールの策定など知的財産に関する整備が進み、知的財産本部は産学官連携を支える組織として重要な役割を担いつつある。また、一部の大学では、知的財産本部と産学官連携を担う部門、さらには技術移転機関(以下「TLO」という。)などとの連携の下に、知的財産の権利化やライセンスのみならず、共同研究や事業化支援、人材育成、特許権以外の知的財産権の管理・活用や、ノウハウライセンスや有体物提供による技術移転など、多面的な産学官連携活動を行う体制へと移行する動きが進みつつある。

したがって、国は、大学等における産学官連携活動が失速することなく、その戦略が十全に展開されるよう、大学等の規模、教育研究分野、グローバル・イノベーションと地域イノベーションへの対応等、各大学等がおかれている多様な特性や環境等を踏まえつつ、その主体的かつ多様な取組を引き続き支援していくとともに、大学等とTLOの知的財産に関する諸機能の統合的運用や連携強化の動きを併せて促していくことが必要である。その際、大学等における持続的・発展的な産学官連携体制を構築する観点から、件数のみならず質の重視を念頭に、国際的な基本特許の権利取得等を促進することが重要である。また、地域振興における大学等の役割を強化する観点から、大学等と地方公共団体との連携を図ったり、知的財産体制が脆弱な大学等の知的財産活動を支えるため、地方における国公私立を通じた大学等の間の連携やコンソーシアムの形成を促進したりすることが肝要である。

さらに、大学等における知財専門人材の増員、若手知財人材の育成とキャリアパスの確立、国際的に通用する知財専門人材の育成・確保などに向け、産学官が連携して知財人材の育成・確保に一層取り組むことや、大学等において新産業や新技術を生み出す実践的な研究人材を養成することが必要であり、こうした取組を国が積極的に支援することも重要である。